私はもともと消化器外科に興味がありました。外科医を目指すことを決めたのは、初期研修医1年目に消化器外科をローテートした時でした。この分野は、腹腔という身体の中で最も大きな空間の中にある胃、腸、肝臓、膵臓、胆嚢などの多くの臓器を対象としています。ある時は癌や機能しなくなった臓器を取り除き、またある時は交通外傷等による臓器損傷を修復します。腸管などの臓器を丹念に縫合し機能させていく技術は非常に高いレベルのものでした。研修中に様々な手術を見ましたが、難しい手術を難なくこなしていく先生方の姿を見て、さらに消化器外科の世界に惹かれていったのを憶えています。また、手術だけでなく、診断や周術期管理、退院後管理まで、一人の患者に対して真摯に向き合う先生方の姿に心を打たれ、消化器外科医になることを決心しました。

外科の技術にはガイドラインがありません。手技を一つとっても医師によって方法が異なり、どれが正解か誰にも分かりません。同じ病気に対して、同じ方法で手術を行ったとしても、糸の結び方ひとつで結果が変わってくる可能性さえあります。『医師は生涯勉強』とよく言われますが、外科医は、技術も一生磨かなければならないのです。合併症のない安全で確実な手術ができるように技術を向上させていきたいです。そして、患者さん一人一人に全力で向き合い、手術を受けてよかったと言ってもらえるように、自分に妥協せず精進していく所存です。