- 診療対象疾患:
乳腺・甲状腺に発生する疾患を対象としています。大学病院であることから、対象疾患の大部分は悪性腫瘍が占めていますが、良性疾患の診療も行っています。
「乳腺」 |
|
「甲状腺」 |
|
- 領域の魅力
乳癌は女性の死因の第一位を占め、患者数、罹患率とも増加傾向にあります。好発年齢が40から50歳代にあることもあり、未成人のこどもをかかえた母親が対象となることも多く、問題となっています。また、最近では遺伝性乳癌も話題を集めています。乳癌関連遺伝子(BRCA1/2)の変異を持つ女性が生涯に癌を発症するリスクは乳癌で41-90%、卵巣癌で8-62%といわれています(NCCNガイドライン)。発癌リスク低減のための予防的切除やBRCA発現に基づいた個別化医療が行われようとしています。20歳代の未婚女性や40歳代の小さい子供を連れたお母さんの未来を守るためにもエビデンスに基づいた標準治療の実践が求められています。
甲状腺癌の大部分は乳頭癌であり、予後がよいことで知られています。(術後10年生存率は90%以上)。このため、世間の話題になることが少ない臓器ですが、原発事故の際には被爆後の甲状腺癌増加が懸念され、現在も調査が行われています。予後がよい一方で再発率も高いため、手術が複数回行われることも多く、治療期間も長期に及びます。術野は主に気管周囲となりますが、頸部外側や縦隔での操作が必要となることもあります。神経周囲での操作も多く、慎重な手技が必要であり、無事手術が終了した際には達成感が得られます。
領域の今後
「乳腺」
手術に関しては縮小化が進んでいます。低侵襲治療はさらに進み、非手術の時代がくるかもしれません。一方で乳癌発症の危険性回避のための乳腺全摘が注目されるにあたり、乳房再建を含めた形成外科的な手技が必要となってきています。この分野では形成外科との協力も始まっています。乳癌治療の根幹は全身での再発予防低減を目指した薬物療法です。最近では乳癌の型(サブタイプ)に合わせた治療方針が選択されることが一般的となりましたが、今後は遺伝子発現によって治療方針が決定される時代が来るものと予想されます。
「甲状腺」
最近の甲状腺癌診療で一番変わったことは、薬物治療の導入です。それまで外科的切除か放射線治療しかなかったところに、分子標的治療が導入されて数年が経過しました。甲状腺の分野でも化学療法の知識が必要となっています。当科では積極的に分子標的治療に関わっており、臨床試験にも参加しています。甲状腺癌治療では外科的切除が第一であることは間違いなく、根治を目指しての拡大手術にも力を入れていますが、薬物療法の可能性に期待して、さらに適応を拡大していく予定です。
- ご検討中の皆様へ
乳腺・甲状腺の両分野とも、診断から手術、薬物療法に至るまで、診療全般を当科が担っています。一人の患者について納得のいくまで検査・治療を行うことが可能です。また、乳腺専門医が2名、甲状腺・内分泌外科専門医が1名常勤しており、乳腺外科学会、甲状腺外科学会の認定施設となっています。このため、当科での研修により両分野での専門医を取得することが可能です。
当科ではガイドラインに基づいた標準治療を基本としていますが、他科との連携や最新の薬剤を用いた大学ならではの診療も行っています。患者様の未来を作るため、一緒に頑張りましょう。