外科医ロードマップ

外科医の道は外科専門医から始まります。

ゴールは卒後13-15年で各領域のSpecialistになることです。

各領域のSpecialist達の言葉も参考にして下さい。

外科医ロードマップ

[ 弘前大学外科専門医研修プログラム統括 ]

弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座内

〒036-8562 青森県弘前市在府町5

TEL 0172-39-5079 / FAX 0172-39-5080

一般外科医から皆さんへ

私は青森県内の中規模病院で一般外科医として働いています。仕事内容は、地域の患者さんが胃癌や大腸癌になった時に手術治療を行うこと、交通事故や転落事故などで手術などの入院治療が必要となった時の管理を行うこと、それから癌治療の中で治療のすべがなくなり緩和ケアが必要になった患者さんのサポートをすることが主なものと思います。

我々は、ある時は外科医、ある時は集中治療医、そしてある時は緩和ケア医として患者さんに医療を提供しなくてはなりません。そのため、より広い分野の知識や経験が大切になってきます。もちろん患者さんの病態によっては大学病院のような大規模病院へ搬送してより専門性の高い治療をして頂かなくてはいけない場合もあります。しかし多くの場合、患者さんが住まわれている地域で患者さんに寄り添い、病態を把握し、患者さんを最も良い方向に導くことが我々に求められます。そのためには外科医としての技術のみならず、様々な領域の知識と経験が必要となります。決して簡単なことではありませんが、少しでも患者さんの力になれたと感じられた時は心からやりがいというものを感じます。

一般外科医という資格はありませんが、一般外科医の技術こそ専門性の高い外科医をめざすみなさんが習得しなくてはならない最も大切なことの一つだと思います。弘前大学外科研修プログラムでもしお会いできたなら、みなさんにこの技術を是非伝えたいと思っています。

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上部消化管外科医から皆さんへ

私たちの領域では上部消化管領域(食道・胃)の疾患を扱っており、食道癌、胃癌がその中心になります。

食道は消化器の中で唯一胸部にある臓器であり、消化器外科の中でも特殊な領域になります。食道癌治療は外科手術、化学療法、放射線治療が密接に関わる集学的治療が核であり、消化器内科、腫瘍内科、放射線科と連携を取りながら、症例毎に治療方針を検討し、進行度に合わせた治療を行っていきます。中でも食道癌手術は頚部、胸部、腹部にわたるダイナミックな手術である一方、反回神経周囲のリンパ節郭清など非常に微細な操作を要し、消化器外科手術の中でも高侵襲、高難度手術に位置付けられています。最近では手術の低侵襲化を目指して胸腔鏡下手術を導入し、良好な成績が得られています。

また、胃癌は日本人に多い癌であり、検診の普及や手術、化学療法の進歩により治療成績は向上してきおりますが、いまだに死亡率の上位を占める癌です。胃切除術が中心となりますが、早期癌に対しては癌の根治はもちろんのこと、QOLを保持する手術が求められ、当科では腹腔鏡を用いた機能温存手術を積極的に行っております。また、高度進行胃癌に対しては術前化学療法後に手術を行っております。消化器外科医の登竜門ともいうべき胃切除術を開腹、腹腔鏡いずれのアプローチでも定型的にまんべんなく経験を積むことができます。

基本的には治療ガイドラインに準拠した治療を行っておりますが、多くの臨床試験にも参加しております。日本の食道癌治療、胃癌治療は世界をリードする領域とされています。日々の診療を通して世界の最先端に触れることができる魅力的な領域です。

さらに、上部消化管は、生きていくために不可欠な「食べる」ということに直結する領域であり、手術の精度がそのまま術後の患者さんのQOL、ADLに深く影響することになります。だからこそ術前、手術、術後と疾患に関してはもちろんのこと、QOL、ADLを含めた患者さん全体を他科、多職種とチームを組んでマネジメントしていくことが重要になります。これは団体競技のスポーツさらに言えば“部活”とも似た感じです。それだけに非常に刺激的でやりがいのある領域だと思います。

最後になりますが、より良い医療を提供していくためには一人でも多くの多種多様な人材が必要です。“All for One(Patients)”の精神をもって私たちと共に進んでいきましょう。どなたでも歓迎します。

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肝胆膵移植外科医から皆さんへ

肝胆膵外科では主に、肝臓、胆管、胆嚢、膵臓の疾患に対する外科的治療を担当しています。急性胆嚢炎に対する胆嚢摘出術から、肝疾患に対する生体部分肝移植術まで、非常に幅広い診療分野をカバーしており、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医制度認定修練施設(A)を制度発足以来維持しています。胆嚢摘出術に始まった腹腔鏡手術は現在、食道、胃、大腸といった消化管癌への応用が進んでいますが、当科では肝、膵、脾手術への適応を早くから拡大し、患者さんの負担軽減に貢献しています。他グループとも協力し、治療方法選択や実際の手術、術後管理に至るまでマルチディシプリナリーチームを形成して診療に取り組んでいます。①治療方針の決定、②手術の遂行、③適切な合併症管理が外科診療の本髄ですが、以上3つを、1)患者さんに説明できる、2)後輩に指導できることが「外科医」の神髄です。共に外科の奥義追究を目指す仲間を待っています。

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乳腺・甲状腺外科医から皆さんへ

乳腺・甲状腺に発生する疾患を対象としています。大学病院であることから、対象疾患の大部分は悪性腫瘍が占めていますが、良性疾患の診療も行っています。

「乳腺」
  • 悪性:乳癌、悪性リンパ腫、悪性葉状腫瘍など
  • 良性:乳腺症、乳腺炎、線維腺腫、葉状腫瘍、女性化乳房など
「甲状腺」
  • 悪性:甲状腺分化癌、未分化癌、髄様癌、悪性リンパ腫など
  • 良性:甲状腺腫瘤、腺腫、バセドウ病、など

乳癌は女性の死因の第一位を占め、患者数、罹患率とも増加傾向にあります。好発年齢が40から50歳代にあることもあり、未成人のこどもをかかえた母親が対象となることも多く、問題となっています。また、最近では遺伝性乳癌も話題を集めています。乳癌関連遺伝子(BRCA1/2)の変異を持つ女性が生涯に癌を発症するリスクは乳癌で41-90%、卵巣癌で8-62%といわれています(NCCNガイドライン)。発癌リスク低減のための予防的切除やBRCA発現に基づいた個別化医療が行われようとしています。20歳代の未婚女性や40歳代の小さい子供を連れたお母さんの未来を守るためにもエビデンスに基づいた標準治療の実践が求められています。

甲状腺癌の大部分は乳頭癌であり、予後がよいことで知られています。(術後10年生存率は90%以上)。このため、世間の話題になることが少ない臓器ですが、原発事故の際には被爆後の甲状腺癌増加が懸念され、現在も調査が行われています。予後がよい一方で再発率も高いため、手術が複数回行われることも多く、治療期間も長期に及びます。術野は主に気管周囲となりますが、頸部外側や縦隔での操作が必要となることもあります。神経周囲での操作も多く、慎重な手技が必要であり、無事手術が終了した際には達成感が得られます。

領域の今後

「乳腺」

手術に関しては縮小化が進んでいます。低侵襲治療はさらに進み、非手術の時代がくるかもしれません。一方で乳癌発症の危険性回避のための乳腺全摘が注目されるにあたり、乳房再建を含めた形成外科的な手技が必要となってきています。この分野では形成外科との協力も始まっています。乳癌治療の根幹は全身での再発予防低減を目指した薬物療法です。最近では乳癌の型(サブタイプ)に合わせた治療方針が選択されることが一般的となりましたが、今後は遺伝子発現によって治療方針が決定される時代が来るものと予想されます。

「甲状腺」

最近の甲状腺癌診療で一番変わったことは、薬物治療の導入です。それまで外科的切除か放射線治療しかなかったところに、分子標的治療が導入されて数年が経過しました。甲状腺の分野でも化学療法の知識が必要となっています。当科では積極的に分子標的治療に関わっており、臨床試験にも参加しています。甲状腺癌治療では外科的切除が第一であることは間違いなく、根治を目指しての拡大手術にも力を入れていますが、薬物療法の可能性に期待して、さらに適応を拡大していく予定です。

乳腺・甲状腺の両分野とも、診断から手術、薬物療法に至るまで、診療全般を当科が担っています。一人の患者について納得のいくまで検査・治療を行うことが可能です。また、乳腺専門医が2名、甲状腺・内分泌外科専門医が1名常勤しており、乳腺外科学会、甲状腺外科学会の認定施設となっています。このため、当科での研修により両分野での専門医を取得することが可能です。

当科ではガイドラインに基づいた標準治療を基本としていますが、他科との連携や最新の薬剤を用いた大学ならではの診療も行っています。患者様の未来を作るため、一緒に頑張りましょう。

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呼吸器外科医から皆さんへ

呼吸器外科で主に扱う疾患は、肺がんや転移性肺腫瘍といった肺に発生した腫瘍をはじめ、縦隔疾患(胸腺腫瘍)、自然気胸などの胸膜疾患、漏斗胸、さらには胸部外傷などが挙げられます。

特に扱うことの多い肺がんは、罹患率が年々増加しております。非喫煙者の肺がんの増加も問題になってきています。また、肺はフィルター臓器と呼ばれ、全身の血液が環流するために大腸癌などが肺転移することも多いです。大腸癌も増加しているため、転移性肺腫瘍の手術も増加しております。新規抗がん剤がいろいろと開発されておりますが、外科治療は肺がんや転移性肺腫瘍の根治方法として重要です。手術では肺動脈や肺静脈など心臓から直接出入りする血管を処理しなくてはなりません。危険な場面も多く緊張もありますが、非常にやりがいを感じます。手術をして、元気な患者さんと外来でお会いしていると外科医でよかったと常々思います。

肺がんや転移性肺腫瘍はまだ他の癌に比べると予後不良です。手術はまだまだ発達する必要があり、手術をしやすくするための新規デバイスの開発もおこなう必要があります。現在当科では80%以上の手術を胸腔鏡補助下に行い、患者さんになるべく侵襲の少ない手術を提供することを心がけております。今後、肺がんにおいてロボット手術が保険適応となる可能性が高く、ロボット手術の準備もすすめております。しかし、どんなにいい手術をしても肺がん再発する患者さんがいます。私達の使命は、患者さんの再発を少しでも減らし、悲しむ患者さんを少しでも減らし、笑顔で過ごせる患者さんを少しでも増やすことです。ぜひ、我々と一緒に仕事をしましょう!

外科をやってみたいけど自分は外科に向いていないかも・・・とか、手が器用でないから・・・思っている人がいればぜひ相談してください。我々の中にも学生時代はそうであった人はたくさんいます。自分は器用だから外科をやりたいという人はほんの一握りしかいないのです。ぜひ我々に一度相談してください。

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心臓血管外科医からみなさんへ

心臓血管外科は主に成人心血管疾患、小児先天性心疾患の二つに分かれており、成人心血管疾患は更に心臓と血管に分かれます。成人の心疾患は虚血性心疾患や弁膜症に対する外科手術が多くを占めますが、近年は補助人工心臓といった重症心不全に対する補助デバイスの植え込み治療も行っています。血管は主に胸部、腹部の大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症といった下肢の血管疾患に対する外科手術を扱っています。血管分野に関しては、従来の外科治療に加えて近年ではステントグラフト治療といった血管内治療が急速に普及してきています。当科では外科手術、ステントグラフト手術ともに積極的に行っています。小児先天性心疾患はASDやVSD、ファロー四徴症やその他複雑心奇形まで多岐に扱い、青森県内の小児先天性心疾患手術を一手に担っています。

私たちの領域の最大の魅力は、当科で扱う手術の多くは患者様の生命予後だけでなく、機能予後も改善できるという点にあると思います。術前には重度の心機能障害のため、日常生活に制限を強いられていた人が手術を行ったことで症状の改善が得られ、術後見違えたようにお元気になる姿をみるのは何ものにも代えがたい喜びです。また、当科で扱う疾患には緊急疾患も多く含まれますので、時には夜間の緊急手術が必要な患者様もいらっしゃいます。そういった方は今まさに生命が脅かされている状態であり、ご本人やご家族の不安は図り知れません。手術は時として長時間に及ぶこともありますが、死の瀬戸際にいる患者様を死の淵から引っ張り上げる、まさに命の逆転ホームランを打てる可能性のある仕事に携われるという事は医師としてとてもやりがいのあることだと思います。

心臓血管外科分野は全ての外科分野の中でも比較的新しい領域ですので領域全体がまだまだ成長の余地を残しています。特に最近は新しい治療法の出現やデバイスの進化が目覚ましく、その分外科医は知恵をしぼり工夫をこらす事で新しいことへ挑戦し、それによって以前よりも外科手術の幅が広がってきています。今まで先人たちが築き上げてきた治療と新たに出現した治療を組み合わせ、これら両方を使いこなすことで、今まで以上に多くの患者様を救うことが可能になってくると思いますし、そうできるように腕を磨いていきたいと思います。

外科は忙しかったり大変そうだったりといったイメージがどうしてもあり、尻込みをしてしまう人もいるかと思います。確かに仕事は大変な時もありますが、その分仕事から得られる喜び、やりがいも非常に大きいです。この先長く働き続けるうえで、どのくらい自分の心がときめく仕事なのかというのは大事なポイントだと思います。ぜひ自分の心のときめきに正直に、思い切って飛び込んできて欲しいと思います。一緒に働ける日を心待ちにしています。

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小児外科医からみなさんへ
  1. 主に扱う疾患

    一番多く扱うのは、鼠径ヘルニア・停留精巣・臍ヘルニアですが、新生児の先天性食道閉鎖・先天性腸閉鎖・直腸肛門奇形・胆道閉鎖・胆道拡張症・先天性巨大結腸症など、先天性の消化管奇形を食道から肛門までを治療対象としています。あわせて、神経芽腫・腎芽腫・肝芽腫などの小児固形悪性腫瘍も治療対象としています。

  2. 小児外科の魅力

    患者さんの長い今後の人生のQOLに、自分の治療の結果が反映されます。非常に怖い面もありますが、非常にやりがいのある領域だと思います。

  3. 小児外科のこれからと可能性

    少子高齢化が叫ばれる昨今です。確かに子供さんの患者数は減少してきていますが、今後の日本の社会を支える意味でも、重要視される領域で、まだまだ発展する可能性が高い領域です。若い先生方とともに日本の将来を担う子供達を治療し、日本の社会に貢献していきたいと考えます。

  4. 外科医を考えているドクターや学生へのメッセージ

    外科系は、以前より3K的な職場だと言われています。確かに 職人的な側面も完全には否定できません。自分の治療スキルが患者さんの将来に反映されるという、ある意味怖いですが、非常にやりがいのある仕事だと考えます。みなさまも、一緒に仕事をしていきましょう。

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下部消化管外科からみなさんに

私たち下部消化管外科医は主に大腸の手術を担当しています。扱う疾患は大腸癌を中心とした悪性疾患、潰瘍性大腸炎やクローン病を中心とした炎症性腸疾患、腹部外傷を中心とした3次救急疾患など多岐に渡ります。私たちの診療の特色は直腸癌をはじめとする骨盤内の高度進行癌に対する根治手術と肛門温存、泌尿器・生殖器機能温存手術に積極的に取り組んでいることにあります。中でも肛門括約筋を一部分切除することで肛門温存を可能とする手術(ISR)に一早く取り組み、全国でも屈指の経験を有しています。また、骨盤内の他臓器への浸潤癌や局所再発癌に対しても術前化学療法や、他診療科との連携により切除率が高い施設として知られています。最近は低侵襲で整容性・機能温存に優れている腹腔鏡下手術、経肛門的内視鏡手術も積極的に行い、現在、初発大腸癌患者様の約7割の患者様に鏡下手術を行っております。2016年1月からは最先端医療であるロボット支援下手術を臨床試験として導入し、3D画像と多様で繊細なロボットアームを用いることで、これまで以上の精緻な手術を行うことにもチャレンジしています。さらには経肛門的内視鏡手術(Ta-TME)も積極的に行い、低侵襲で整容性・機能温存に優れている手術も目指しております。

大腸癌は年々増加傾向です。その中で特に青森県の大腸癌死亡率は、全国最下位となっております。このような状況を改善させるために、我々とともにこれからさらに普及していくと思われる腹腔鏡手術やロボット手術に取り組んでみませんか?手術は決して一人でできるものではありません。腹腔鏡手術はチームプレーが特に大切です。『人との和』を大事にできる先生方、ぜひお待ちしております。

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