私が外科医を志したきっかけについてお話しします。実は、私は大学5年生の臨床実習で心臓血管外科をローテートするまでは、正直、外科医にはならないと思っていました。以前から先天性心疾患に強い興味を抱いていたので、小児科や内科系あるいは基礎研究の進路を考えていました。しかし、実際に現場を経験して、どれだけ医学が進歩しても外科医にしかできない領域があることを思い知りました。

赤ちゃんがまだお母さんのお腹の中にいる時に、なんらかの些細な原因により通常とは異なる形態の心臓と大血管を持って生まれてしまうことがあります。そのままでは長くは生きられないその赤ちゃんが、外科的な修正を加えてあげることで命をつなぐ事ができた症例を臨床実習で経験しました。その手術や一連の治療の難しさを目の当たりにし、同時にその子の将来や家族の問題なども考えさせられました。それ以来、外科的治療に強い憧れを抱き、自分も携わりたいと思うようになり心臓外科医を目指すことを決心しました。

神奈川県出身でしかも大学入学まで4年間も遠回りをした私を拾ってくれて、さらには外科医を志すきっかけまでくれた恩義のある母校弘前大学で、恩師の元で一人前の心臓外科医を目指すことは私の運命であると感じ、弘前大学外科専門医プログラムに参加いたしました。3年間のプログラムで沢山の人にお世話になりながら、患者さんや患者さんの家族から信頼される心臓外科医を目指ししっかりと研鑚を積んでいきたいと思っています。