主任教授より外科専門医を目指す皆さんへ

消化器外科学講座 袴田教授
胸部心臓血管外科学講座 福田教授

新制度の中で外科専門医研修を受ける意味について、心臓血管外科の福田教授はどのようにお考えですか。

福田教授:以前は卒業したらすぐ外科をやって、外科専門医を5,6年目で取得して、さらにその上のサブスペシャリティを取得する。僕らだと心臓外科専門医を取得しました。その道がそんなに遠くはなかった。外科研修の後半で心臓血管外科の研修をしながら並行して外科専門医をとるというような形だったんですよ。それが、研修制度が変わって結局2年間のローテーションの初期研修が入って、その後に外科研修が入って、その後にサブスペシャリティという形になりました。サブスペシャリティを初めから決めていて、例えば「心臓をすごくやりたい」という人たちにとっては、ちょっと遠くなっちゃうのが、一つの問題ですね。ただ、それでじゃあ外科専門医をとらない、っていうのはない。外科専門医をとらなければ、サブスペシャリティの専門医がそもそも取れない。これから色んな新しい医療とか新しいデバイスとかを使ってやってくときには、外科専門医をきちんと取っていて、そのうえで色んなデバイスや手技に関してトレーニングを受けているっていうのが必須とされています。当然専門医はとらないとやっていけないです。

若い頃には、早く色んな手技を経験して早く術者をやりたいって思う気持ちは十分わかります。僕は、そういう意味では非常に恵まれていて若いうちから術者をやらせてもらえる立場には立ったのです。でも、そうでなくても例えば30歳から40歳の間に、しっかり目が肥えた状態で手術すれば十分追い付く。逆に言うと、若いうちに限られた手術ばっかり見ていると、他が見られなくなってしまう。視野が狭くなって他の考え方ができなくなってしまう。そういう点で、広い知識と広い技術を見た方がいいと思います。心臓外科はやっぱり外科の一部門にすぎないわけですから。

100年前は、整形外科も、婦人科も、心臓外科もやる、という先生がいたわけですよ。それに整形も婦人科も心臓も消化器領域も網羅したような外科系の雑誌が昔はあった。

消化器外科の袴田教授はどのようにお考えですか。

袴田教授:僕も基本的に同じ意見です。僕たちの同級生達は医学部を卒業すると、すぐ消化器外科とか乳腺外科とかに進んで多くの手術をやって早く一人前になっていた。卒後6年7年もするといっぱい手術をやって、今より早くその分野の外科医になっていたのかもしれないですよ。でも今の若い人たちを見ていると、学内でも学外でも心臓血管外科や色んな科で研修させていただいていてね、羨ましいと思いますよ。

例えば心臓の手術とかだとね、研修の中で実際に手技を行う要素は多くないとは思うんです。でも心臓外科研修を経験した若い人達の発言を聞いているとね、心臓血管外科の周術期管理の知識や技術をしっかりと習得していて、消化器外科医としてものすごくプラスになっていると感じます。

それとね、この地域の外科の専門医プログラムで外科研修することで、心臓血管外科志望であっても、小児外科志望であっても、研修期間を終えてからもその時にご指導頂いた先生方のとこに相談ができたりだとか、ポイントをディスカッションできたりだとかするんです。そういうところで、患者さんの治療の安全性だとか、医療の質がよくなっていると思いますよ。なので、ベースとなる外科専門医研修はやっぱり必須だと思いますよ。その後で福田先生がお話しされていたようにサブスペシャリティをやればいいと思います。消化器も、大腸だとか、肝臓だとか、色んな分野が細分化されてきています。分かれてきていますけど、ベースラインがちゃんとしてさえすれば30代だとか40代、50歳前半くらいまでで、専門を極めた素晴らしい仕事ができるんじゃないかな。若いうちに一般外科研修を修めて、30代、40代は専門性を研ぎ澄ましてね。細分化して細分化してね。細分化はね、元のベースラインが広いからこそ生きるんじゃないかと思います。サブスペシャリティをあまり急ぐことなかれ、ということについては賛成ですし、大体10年くらい経つと皆さん自己判断がちゃんと出来て、ええ、しっかりとしたサブスペシャリティを確立していると思います。ならばこそ、広く診ることの意味が若いうちにはあるんじゃないかと思いますね。

“専門医”っていう言葉は、やっぱり専門性と総合性とどっちもだと思うんですよ。専門医は“専門馬鹿”とは違うんです。総合性という基礎の中に、専門性がないと山が高くならないじゃないですか。だから最初は、総合性と専門性のバランスの軸足を総合性の方に置いた方がいいのではないか、っていう意見を持っています。

メッセージ

しっかりした土台を作ることこそ最も重要ということですね。

袴田教授:ええ、損にはならないと思いますよ。そういう意味で、弘前はいいところだと思いますよ。

福田教授:弘前大学では、心臓血管外科専門医も呼吸器外科専門医も、そうやって一般外科研修を一年間いれても、最短で殆どみんな取れています。それに、消化器外科教室から心臓血管外科教室へ研修に回ってくる人たちも楽しそうです。他の視野を学ぼうとしているからだと思いますし、加えて、若手医師が沢山いて、仲間が沢山いるからっていうのもあると思います。この和気藹々としているのは、胸部心臓血管外科と消化器外科を合わせた我々の特徴なのね。やっぱりそういう点では、弘前大学はすごくいい雰囲気だと思いますよ。

福田教授:で、もう一つは、 袴田先生がお話しされていた“know who”っていうことがとても大事だと思います。“know how”は勿論必要だけど”know who“ってのが大事で、誰かを知っていると相談しやすい。お互いに顔を見知って、この人がどういう人で、どんなことを考えてっていうことが、わかっていれば、診療科をこえて患者さんだって紹介しやすいし、頼みやすいし、相談しやすいし、助けてくれる。診療科の壁があまりないという点で、僕は弘前大学はいいと思いますね。

袴田教授:若い先生同士でも科を越えてよく相談してますよね。

弘前の外科医研修プランについてお聞きします。県外から弘前大学に入学した人にといっては、卒業後も弘前にとどまるのか、地元に戻るか、あるいは東京や大阪といった大都会に行くかというのは一つの悩みどころではないかと思われます。
弘前で学生生活を送ったけれど地元は弘前じゃない人、あるいは他大学で学び弘前とは縁もゆかりもない人たちにとってあえて弘前で外科研修をやることのメリットは何でしょうか、さらには弘前のような所謂「地方」と呼ばれる地域で外科研修をやるメリットは何でしょうか?

袴田教授:弘前でやる良さ、それはプログラムの良さだと思うんですよ。外科医の修練は、一般外科とその後の消化器外科や呼吸器外科、心臓血管外科というようなサブスペシャリティまでぐらいの範囲と、更にその先のことと大きく2つに分かれると思うんです。

一般外科とサブスペシャリティ修練に関しては、弘前のプログラムの内容というかアウトカムは比較的良いだろうと思っているんです。

例えば先程福田先生が、医局員達は全国平均と比べて遅れることなくちゃんと専門医まで取得してますよとおっしゃっていましたけど、うちも実際彼らのアウトカムを毎年評価するんですよ。どんなことを何例やったかという感じで全員から毎年発表してもらうんです。若手が主催して若手が質問して、指導医がコメントをするという形で。それを見てるとみんな、外科専門医に必要な手術の症例数は術者数も経験症例数も1年くらいでクリアしてますね。それ以外の術者平均数とかみても外科学会で上がってくる全国調査よるもはるかに多いんです。なので、少なくとも若いうちに多くの手術症例にバランス良く暴露されていると思います。すなわち外科の基礎の内容としては消化器外科志望、心臓血管外科志望に関わらず実のある研修をうけておられると思うので、プログラム関してはかなりの質の高い修練を受けているんだと思います。あとは、若手の先生方の満足度もいいと思いますし、大学だけとかじゃなくて周りの関連施設の先生方のサポートの体制も充実していると思うので、そこは大学病院と外病院とのバランスのいい専門性と総合性の2軸だと思います。

メッセージ2

左から、小児外科診療教授 平林健、胸部心臓血管外科教授 福田幾夫、消化器外科教授 袴田健一、呼吸器外科診療教授 対馬敬夫

もう一度専門を選べるとしたら、外科を選ばれますか?さらに、もし外科医になるとしたら、何外科になりますか?

袴田教授:僕は外科ですね、なにも迷わない。誰かが言っていたけれど、もう一度生き返ったら何をやるかと聞かれた時に、一回外科をやった人はまた外科を選ぶ確率が最も高いって。全く迷わず外科を選びます。消化器外科とか心臓血管外科とか呼吸器外科とか小児外科とか、何外科というのはあまり区別はないけれど、外科が良いです。教授職って意味ではなくてどこかで一介の外科医として生きていたいです。何も考える余地なしです。

福田教授:僕は心臓血管外科。again and again and againだよ。

では最後の質問になりますが、HPを見て外科を検討している2年目以降のドクター達へメッセージをお願いします。

袴田教授:やりがいがあります。外科っていう仕事は第一にやりがいがある。それから弘前の一般外科研修は内容が充実していると思いますし、チームとしても充実している。将来に渡って個人の可能性をサポートしてくれるのではないかと思います。一緒にやりましょう。もちろんどの外科分野でも構わないけれど。

福田教授:もちろんウェルカム。ウェルカムですよ。ひとかどの人にしてあげます!外科医でひとかどの人っていうのは、すなわち患者さんに感謝される外科医。

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[ 弘前大学外科専門医研修プログラム統括 ]

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